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分析法バリデーションの第一歩は、数回の繰り返し分析による再現性確認です。 医薬品分野では、ICH
Q2(R2)が分析法バリデーションの国際的指針となっています。
分析法が完成したら、まず数回の繰り返し分析を行い、再現性を確認します。 確認すべき項目は次のとおりです。
・保持時間
・ピーク面積 ・ピーク高さ
・ピーク形状(テーリング、リーディング) ・カラム圧力
これらに変動が生じる場合、その分析法は堅牢とはいえません。
再現しない場合、多くの人はカラムを疑います。しかし実際には、
・試料前処理
・移動相組成(特にイオン強度) ・pH設計
・試料溶媒 ・装置状態
などに原因があることがほとんどです。
HPLC分離は、化合物1分子と固定相1分子との分子間相互作用の積み重ねです。
物質が会合体を形成している場合、カラムは会合体として認識しようとします。注入試料溶液中の溶質は分子レベルで分散(完全溶解)している必要があります。
(参考)
試料(溶質)を移動相に溶解することは正しい?
ICH
Q2(R2)では、分析法バリデーションにおいて以下の項目を評価することが求められています。
・特異性(Specificity)
・直線性(Linearity) ・範囲(Range)
・正確性(Accuracy) ・精度(Precision)
・検出限界(LOD) ・定量限界(LOQ)
・堅牢性(Robustness)
これらは規制文書上の要求事項ですが、その本質は分子レベルの再現性確認です。
例えば、
精度(Precision)
→ 同一条件下で分子間相互作用が安定しているか
堅牢性(Robustness)
→ pHや有機溶媒比率のわずかな変動に対して、相互作用がどの程度変化するか
特異性(Specificity)
→ 目的成分と不純物の相互作用差が十分に設計されているか
ICHは「結果」を評価していますが、HPLC分析法を確立するには「原因」を理解することが重要です。
試料の安定性が問題となることもあります。
繰り返し分析中に以下のような現象が発生する場合は、分析法ではなく試料が変化している可能性があります。
・ピーク高さが変化する
・新たな不純物が出現する ・保持時間が徐々に変動する
このような場合、ICHでいう特異性や精度の評価を行う前に試料の安定性を確認しなければなりません。
対策としては以下が必要になります。
・遮光
・低温管理 ・安定化剤の検討
・用時調製
ODS万能説は存在しません。
「1本のODSカラムで全てを分析したい」と考える人がいますが、これは不可能です。
化合物と固定相の間には、以下のような相互作用がはたらいています。
・疎水的相互作用
・静電的相互作用 ・配位的相互作用 ・イオン的相互作用
特に溶質のイオン性は分離挙動を大きく支配します。
カチオンか
アニオンか 双性イオンか
この違いを無視したままバリデーションを実施しても、堅牢な分析法にはなりません。
分析法バリデーションとは、単にICHチェックリストを埋める作業ではありません。
分子構造を理解し、分子間相互作用を設計し、その再現性を確認すること。
それが堅牢な分析法を確立するために不可欠な作業です。
(参考)
HPLC分析法を見つけるには
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