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「HPLC分析試料は移動相に溶解する」と書かれたものがありますが、これは必ずしも正しくはありません。試料が移動相に溶解しない場合があるからです。
「移動相に溶かす」ということはt0付近でゴーストピークを発生させないためには有効です。しかしアイソクラティック分析の場合、溶質が溶解しやすい溶媒を移動相にすると溶質の移動相への分配が固定相よりも大きくなるために、保持できなくなります。溶質の溶解性と移動相の極性は個別に考える必要があります。
HPLCカラムへ試料注入するときに必要不可欠な要件があります。それは「溶質が一分子単位で固定相表面に接触すること」です。もし会合体ができるような溶媒を用いると、固定相は溶質分子を会合体として認識しようとします。単体と会合体が混和している状態では注入後のピーク形状は悪くなります。
また実試料の場合は分析対象の溶質以外の他成分(マトリックス成分)の溶解性も考慮されなければなりません。マトリックス成分が溶解していなければカラムへの負荷が大きくなり、カラム圧力の上昇につながります。この場合は試料前処理が不可欠となります。
試料溶媒と移動相溶媒との相溶性も重要です。試料溶媒と移動相が混和しない場合は溶質が固定相に一分子単位に接触できなくなる可能性があります。
以下は試料溶媒と移動相溶媒が異なる事例です。
メラトニン関連化合物
https://www.imtakt.com/TecInfo/TIE72E.pdf
グラジエント分析の場合の試料溶媒は移動相の初期pHに合わせたほうがよい場合が多くあります。
ベザフィブラート(高脂血症治療薬)
https://www.imtakt.com/TecInfo/TIE77E.pdf
セフェム系抗生物質
https://www.imtakt.com/TecInfo/TIE76E.pdf
繰り返しになりますが、HPLCの注入試料は分子レベルで溶解できる溶媒が必要です。見た目には完全に溶解しているようであってもクラスター分子を形成している場合もあります。
クロマトグラムのピーク形状が悪い場合は、まず試料溶解溶媒を検討してみることをおすすめします。
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