固定相の分子間相互作用  

  Cadenza, Unison 逆相固定相の分子間相互作用 静電的相互作用
医薬品成分の保持に及ぼす固定相の影響
   
静電的相互作用による保持挙動の違い
 

医薬品の構造は比較的複雑であり,その溶出挙動を予測することは難しいのが現状です。同じ物質でも固定相の表面構造によって保持挙動が異なる実例を上図に示しました。Unison シリーズは水100%系溶離液に対応し,高極性化合物の保持・分離特性に優れた設計がされています。一方Cadenza CD-C18は,ODS(オクタデシル基)のリガンド密度を比較的高めに設計し,溶質の立体構造の認識能を高めた固定相として設計されています。
上図のpravastatin(高脂血症治療薬)の保持挙動に関しては以下のような固定相間差が認められます。

Unisonシリーズの中では保持の大きさは Phenyl < C8 < C18 の順

一般に逆相固定相はアルキル鎖長の長いほど疎水性が高いとされています。
Unisonの固定相も同様に設計されているために,このような溶出挙動をとります。
Phenyl固定相の炭素数はC6ですが,ベンゼン由来のπ電子が固定相の極性を若干高めており,アセトニトリル移動相下ではC4固定相に近い溶出力と考えられます。

同じODSでもUnison UK-C18の方がCadenza CD-C18よりも保持が大きい

Unison UK-C18のODS導入量はCadenza CD-C18よりも低く抑えています。したがって疎水性だけからすると溶質の保持は小さくなるはずです。
ところが pravastatin に関してはUnisonの方が大きな保持を示します。この理由として考えられることは以下のとおりです。
溶質の構造にはたくさんの酸素原子があります。この酸素原子中の孤立電子対に起因する双極子モーメント,あるいは水酸基由来の水素結合性が溶質には存在しており,総合的に静電的相互作用の大きな分子と考えられます。またUnison固定相の表面にもシロキサン構造由来の酸素原子による双極子モーメントが存在し,結果的に溶質との間に水素結合あるいは双極子-双極子相互作用(静電的相互作用)がはたらいていると理解されます。
同じODSでもCadenzaはリガンド密度が高いために,溶質が基材表面近くまで到達することを阻害しており,これらの相互作用はUnisonほどにははたらかないと考えられます。結果として,Unisonは基材表面近くの静電的相互作用により,Cadenzaよりも保持が大きいと考察されます。

Unison UK-C8とCadenza CD-C18がほとんど同じ保持を示す

前項のようにCadenzaはODS密度が高いために,基材表面付近の静電的相互作用があまりはたらかない構造と考えられます。C8はODS(C18)よりもアルキル鎖長はかなり短いために,溶質は基材表面近くまで到達できると考えられます。相互作用の大きさをまとめると以下のようになります。

疎水的相互作用

UK-C8 < CD-C18

静電的相互作用

CD-C18 < UK-C8

これらの相互作用の総和により,pravastatin の保持が同じになったと考えることができます。 同じODS固定相でも,いろいろな相互作用の総和により物質の保持が決定されます。

これによる分離特性の違いもあらわれます。溶質と固定相との相互作用を理解することが,分離の最適化効率を高めることにつながります。

 

 

極性化合物のODS保持特性比較

 

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