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HPLCではグラジエント分離が基本です。アイソクラティック分析は、例外と考えるべきです。
これはGCを考えれば理解しやすいでしょう。
GCでは昇温分析が当たり前であり、定温分析が標準であるとは誰も考えません。これは、溶質―固定相間の相互作用の強さが温度によって変化することを利用しているからです。
HPLCでも本質は同じです。
溶質―固定相間の相互作用の強さは移動相組成によって変化します。
したがって、移動相を変化させながら分離を行うことは自然な設計思想です。
アイソクラティック分析の危険性
溶質と固定相の相互作用が強い場合、アイソクラティック分析は不安定になりやすい方法です。
保持がわずかに変化するたびに「カラムに再現性がない」というクレームにつながります。
しかし実際には、原因はカラムではなく、メソッドそのものの堅牢性不足である場合が多いのです。
アイソクラティック条件では、わずかな移動相組成の差がそのまま保持差に直結します。
特にイオン的相互作用が関与する場合、pHやイオン強度のわずかな差が分離挙動を大きく左右します。
このような系では、アイソクラティック分析で高い再現性を期待することは困難です。
2~4液ポンプ混合によるアイソクラティック分析の問題
近年よく見受けられるのが、2~4液ポンプによる混合でアイソクラティック分析を行う方法です。
一見すると便利に見えますが、この方法では移動相が分子レベルで完全に均一化されているとは限りません。
その結果、溶質―固定相間の相互作用が微視的に不均一となり、保持や分離の再現性が低下する可能性があります。
メソッド開発段階では条件探索のために有効な手法ですが、開発が完了した段階では、移動相をあらかじめ単一溶液として調製し、1ポンプでの再現性確認を行うことが必要です。
アイソクラティックが成立する要件
アイソクラティック分析が比較的安定するのは、疎水性のような弱い相互作用が支配的な場合です。
ODSカラムによる単純な逆相分離では、有機溶媒比率がわずかに変動しても、保持や分離挙動が劇的に変化することは多くありません。
しかし、イオン的相互作用が関与する場合は事情が異なります。
・カチオンか
・アニオンか ・双性イオンか
・イオンの価数 ・分子中の電荷数
これらが関与する系では、移動相のわずかな違いが分子間相互作用エネルギーを変化させます。その結果、保持が大きく変動します。
固定相の本質
HPLC充てん剤は高分子材料です。
表面修飾されたリガンドを分子単位で完全に再現することは不可能です。これは、分子量が完全に同一の高分子化合物を得ることができないのと同じ理屈です。
したがって、「固定相は完全に同一である」という前提は科学的には成立しません。
強い相互作用を前提としたアイソクラティック分析では、この微細な差が保持差として現れやすくなります。
歴史的誤解
HPLCが非常に高価であった時代、ODSカラムはポンプ1台で運用されていました。
この運用形態が長く続いた結果、「HPLCではアイソクラティック分析が標準」という誤解が広まりました。
しかし、装置制約から生まれた運用法が理論的に最適であるとは限りません。
例外的にアイソクラティックが必要な場合
異性体や類縁体分離では、長いカラムを用い、緩勾配あるいはアイソクラティック溶出で分離せざるを得ない場合があります。
その場合でも、再現性が得られやすい移動相組成を慎重に選択することが不可欠です。
特に、イオン強度、pH、溶媒純度など影響因子などの影響因子を最小限に抑える設計が求められます。
グラジエント法のメリット
グラジエント法には明確な利点があります。
・高速分析が可能
・ピーク幅が狭くなり、検出感度が向上する
・広い極性範囲の化合物を一度に分離できる
保持が強い成分も効率よく溶出できるため、分析時間の短縮と感度向上を同時に実現できます。
装置選択の重要性
低圧グラジエント装置は、メーカーやモデルによって混合機構が異なります。
そのため以下の要因が装置ごとに異なります。
・グラジエント遅れ時間
・混合効率 ・実際の溶媒組成
このため、高速分析や高い再現性を求める場合には、バイナリーポンプによる高圧グラジエント装置の使用が強く推奨されます。
(参考)
HPLCの高圧・低圧グラジエントとは
HPLC分析法を見つけるには
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