YAZAWA HPLC COLUMN SCHOOL

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シリカ系HPLCカラムに好適なpH調整剤

酸性物質のpKaと塩の解離状態

HPLCで分析したい化合物の多くがイオン(陽イオンや陰イオン)になりやすい性質をもっています。これらイオン性物質(溶質)をHPLC分析する場合、溶質が解離するかしないかで保持が大きく異なります。

上図のようにイオン性物質は試料溶媒や移動相pHによって解離状態が変化します。
安息香酸の場合、酸性側ではカルボキシル基は非解離になるため化合物の疎水性は高く逆相保持は長くなります。一方中性pHのときカルボキシル基は解離してアニオンになるため化合物の極性は高く逆相保持は短くなります。
このようにイオン性物質を分析する場合は移動相pHによって物質の解離性(疎水性)が変化するために溶質の保持も変化します。最適な保持・分離やピーク形状のためには移動相pHやイオン強度の調整が不可欠となります。

イオン性物質を分析するための移動相pHでもう一つ重要なことはpKaです。イオン性物質にはpKaの値があり、この値を移動相pHにすると溶質は50%ずつ解離します。溶質は二つの疎水状態(解離と非解離)をとるために、ブロードなピークになったりピーク割れを生じることもあります。したがってイオン性物質を分析する場合はpKa付近を移動相pHにしないことが重要です。

「塩を分析したい」という人がいます。水を使う逆相系では、塩はカチオンとアニオンに解離しますから、塩として分析することはできません。この場合もpHによって疎水性が変わりますから、移動相のpHとイオン強度の調整が不可欠です。

移動相のpHやイオン強度を調整するための便利なpH調整剤は以下の揮発性添加剤の単独もしくは混合使用です。

酢酸 / 酢酸アンモニウム
ギ酸 / ギ酸アンモニウム

これらは揮発性であるためカラム内で析出することはありません。90%以上の有機溶媒と混和することができ、混和できなくてもミセルができるだけでカラムにダメージを与える危険性が少ないことが利点です。無機塩とは異なるさらに大きな特長は、酢酸アンモニウムやギ酸アンモニウムは100mMでも揮発しやすいためMSの真空部内への汚染が少ないことです。

これに対して従来のリン酸塩はイオン強度が高く有機溶媒との相溶性に欠けるため、50%有機溶媒以上で塩類の析出が生じます。この析出がカラム内で生じた場合、カラム圧力が急激に上昇します。しかも水洗浄では洗い出すことができません(圧力を下げられない)。
もちろんMS検出には不適です。

LC-MSが急速に普及している現在、移動相組成に従来のようなリン酸塩を用いることはカラムにとってもダメージが大きいため、推奨できません。
HPLC移動相のpH調整剤には 酢酸/酢酸アンモニウム系もしくはギ酸/ギ酸アンモニウム系を用いることが強く望まれます。

(参考)
移動相のpH調整にpHメーターは使わない<揮発性緩衝液(酢酸系 ギ酸系 参照)>


YF26 / 矢澤  到  [YAZAWA Itaru, hplc@imtakt.com]

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