HPLCポンプから移動相が流れ出ないトラブル - チェック弁 |
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HPLCポンプから移動相が正常に流れ出ないトラブルについて解説します。
移動相が空になっていたり、ポンプ流量設定ミスやポンプシステムの故障という原因も考えられますが、最も可能性の高い原因は「チェック弁(チェックバルブ)の動作不良」です。
チェック弁は「逆流防止弁」とも呼ばれ、移動相が逆流することなく一定方向に流れるよう流路のON-OFF制御をするもので、HPLCでは一般的に「ボール弁」とそれを受け止める「弁座」により構成されています。
HPLCポンプには「直列式」もありますが世界的には「並列式」が一般的であり、これは二つのポンプヘッドが並列に交互動作することによりプランジャーの吸引吐出で発生する脈動を打ち消す構造となっています。 この並列式ダブルプランジャー型の二つのポンプヘッドにはIN側とOUT側にそれぞれチェック弁がつけられており、流路方向の場合ボール弁が弁座から浮き上がることで移動相が流れます。反対に移動相が逆流しようとするとボール弁は弁座に密着してこれを防ぎます。その結果高圧下においても移動相は一定方向に流れる仕組みとなっています。
チェック弁は一つのポンプヘッドにINとOUTの計二つ、通常はポンプヘッドが二つですからチェック弁の合計は四つになります。したがってどのチェック弁に不具合があるかを特定することはたいへん困難な作業となります。
チェック弁が機能しないトラブルのおもな原因を以下に挙げます。
1. 長期間HPLCを使わないで放置した場合にチェック弁と弁座がくっついて離れなくなった(移動相が全く流れない)
2. チェック弁と弁座の間にゴミが詰まって密着しなくなった(移動相が逆流する)
流量が低下している場合は、チェック弁だけでなくポンプヘッドのシリンダー内部に気泡が絡んでいる場合があり、以下の方法で解決できることがあります。
・「パージボタン」により移動相を高速パージする
・古いカラムや抵抗管を付けた状態で高流量を流しはじめ、圧力がかかってきたときにパージバルブを一気に大気圧に解放する(急激な圧力差で空気が抜ける)
チェック弁に問題がある場合、どのチェック弁が機能していないのかを把握する方法を以下に示します。
・二つのポンプヘッドOUT側のチェック弁を両方とも取りはずず
・ポンプをONにしてOUT側から移動相が出てくるか確認する
・OUT側のチェック弁の穴から移動相が出てこなければ、出てこない方のIN側のチェック弁が不良と判断し、そのチェック弁を洗浄する
・移動相が出てくるようであれば、対応するOUT側のチェック弁を洗浄する
チェック弁の洗浄の推奨例を以下にに示します。
・問題のあるチェック弁(INかOUTかを区別すること)をビーカーに入れ、蒸留水を満たす
・超音波洗浄機にかけ10分ほど洗浄する
・この方法でも解決できない場合は、「蒸留水」の替わりに「エタノール」もしくは「2-プロパノール(IPA)」を満たして同様に超音波洗浄をおこなう
・この方法でも解決できない場合は、「約1M
硝酸水溶液(皮膚に触れないよう注意)」を満たして超音波洗浄、そのあと「蒸留水」で同様に超音波洗浄をおこなう
・この方法でも解決できない場合は、チェック弁のユニットを注意深く分解してボール弁や弁座を洗浄する(組み立てられない場合もあるので注意)。もしくは新しいチェック弁に交換する
HPLCの高圧ポンプ性能を維持することは簡単なことではありませんが、保守契約によるメーカーのメンテナンスに頼るのではなく、自分でチェック弁を保守する程度のことはクロマトグラファーであるなら習得すべきテクニックです。
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