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カテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン)の分析は、生化学分野では古くから重要でありながら、常に「難しい分析」とされてきました。化学構造が持つ本質的な問題と、HPLC
技術の歴史的制約が重なってことが理由です。
カテコールアミンは、フェノール環に隣接した二つの水酸基(カテコール基)と、一次アミノ基を持つため、非常に極性が高く、pH 2〜4
では強いカチオンになります。このためC18 などの逆相カラムではほとんど保持されず、分析は極めて困難でした。
その解決策として広く使われたのが「イオンペア試薬」です。n-ヘプタンスルホン酸(HSA)などの陰イオン性イオンペア剤を移動相に加え、カテコールアミンと複合体を形成させて疎水性を与え、逆相で保持させる手法です。これにより、保持・分離は可能になりましたが、いくつもの問題が残りました。
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イオンペア剤はカラムに強く吸着し、平衡化に時間がかかる
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カラムが「イオンペア専用」になり、他の分析に使いづらい
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イオンペア剤は揮発性ではなく、MS 検出と両立しない
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ベースラインが乱れやすく、電気化学検出器(ECD)と併用するとノイズ源になりやすい
特に(3)の問題は決定的で、LC-MS が普及する 2000
年代以降、イオンペア法は「高感度分析とは相性が悪い」手法となりました。結果として、カテコールアミン分析は長い間、ECD(電気化学検出器)に頼る必要がありました。ECD
は高感度ですが電極の管理が難しく、分析条件の再現性に手間がかかるという弱点もありました。
つまり、従来の分析は、「保持が弱い →
イオンペアで強引に保持させる → 検出器や再現性に問題」という構造的な課題を抱えていたわけです。
LC-MS
が主流になり、揮発性移動相が求められる現代では、イオンペア法の欠点がより顕著になり、新しいアプローチが必要になりました。
それが、混合モードカラム(順相+イオン交換、逆相+イオン交換)です。
Intrada Amino Acid と Scherzo
SS-C18 は、この歴史的な問題を解決するために設計され、従来法では避けられなかった「保持の弱さ」「イオンペア剤の制約」「MS
非対応」という三つの壁をクリアした点に大きな意味があります。
Intrada Amino Acid
https://www.imtakt.com/TecInfo/TI801E.pdf
Scherzo SS-C18
https://www.imtakt.com/TecInfo/TI800E.pdf
3種カテコールアミンの高速LC-MS分析
https://www.imtakt.com/TecInfo/TI799E.pdf
1. カテコールアミン分析に使われる代表的な二つのカラム
Imtakt
には、カテコールアミン分析に適した二つの混合モードカラムがあります。それぞれ設計思想と得意分野が異なります。
Intrada Amino Acid
は「HILICのように見える」ことがありますが、本質はHILICではありません。アミノ酸を確実に保持するために、アニオンリガンドを積極的に導入した、順相
+ IEX の混合モードです。
pH
2〜3ではカテコールアミンは完全にカチオン化し、アニオンリガンドに強く吸着します。このため、このイオン的保持は極性的な保持力よりもはるかに強く、疎水性アミノ酸も確実に保持することができます。
アミノ酸から派生したカテコールアミンもカチオンですから、アミノ酸の分析条件で吸脱着することができます。
三種のScherzo
カラムは、C18に陽イオン交換基と陰イオン交換基を同時に導入したマルチモードカラムです。疎水性とイオン交換の両方を利用するため、カテコールアミンの3種(E、NE、DA)は短時間で分離できます。イオン的な引力はイオン性の強いSS-C18カラムが適しています。
カテコールアミンのようにイオン性と疎水性を有する化合物に対して、Scherzoカラムは「保持」と「選択性」を両立できるよう設計されており、最初からカテコールアミン単独を対象とする分析では最適な選択肢になります。
2. Intrada Amino Acid を使うべきケースと理由
Intrada Amino Acid
は、アミノ酸、神経伝達物質、代謝物などを「まとめて分析したい」場合に最適です。
TI801E のアプリケーションでは、アミノ酸(Glu,
Asp, GABA など)、ACh、serotonin、5-HIAA、さらにカテコールアミン 3
種まで、合計13成分がすべて保持・分離されています。
これは順相 + IEX
の強い保持力により、多様な極性化合物を一括で扱えるためです。
平衡化は長時間必要と思われがちですが、実際にはイオン交換が主保持であるため、静電バランスに依存する順相モードとは異なり、短時間で再現性が得られます。
まとめると、
「アミノ酸が主役で、その代謝物としてカテコールアミンも測りたい」
という研究・臨床分析では Intrada Amino Acid が最適になります。
3. Scherzo SS-C18 を使うべきケースと理由
Scherzo SS-C18
は、最初からカテコールアミンを対象とした設計と言えます。
TI799E のデータでは、30 × 2 mm の短カラムで
DA / NE / E の3成分を約2.5分で分離しています。これは陽イオン交換により強く保持し、逆相で選択性をつけられるためです。
Scherzo
SS-C18 は高速LCに適しており、平衡化時間も短く、安定性が高いことが特徴です。
まとめると、
「カテコールアミン3種だけを高速・高感度で測定したい」
という用途では Scherzo SS-C18 が圧倒的に有利です。
4. Intrada と Scherzo の使い分け
アミノ酸や神経伝達物質を広く網羅し、その中でカテコールアミンも同時に測定したいなら Intrada Amino Acid
を使うべきです。
一方、最初からカテコールアミンだけを対象にし、高速・高感度で測定したいなら Scherzo SS-C18 が最適なカラムです。
両者とも逆相では保持できないカテコールアミンを確実に保持し、LC-MSで安定して測定できるよう設計されている点が大きな特長です。
Intrada Amino Acid
・順相 + アニオン交換 ・アミノ酸 + 神経伝達物質 +
代謝物の一括分析に最適
・カテコールアミンも確実に保持(5-HIAAなど酸性代謝物も保持)
・MS感度が高い(ACN-rich) ・平衡化は短時間で十分
Scherzo SS-C18
・逆相 + 陽イオン交換(+陰イオン交換)
・カテコールアミンを高速分離できる
・3成分なら2〜3分で分離可能 ・MSとの相性が良い
・平衡化が速く、高速LCに最適
5. まとめ
アミノ酸や神経伝達物質を広く網羅し、その中でカテコールアミンも同時に測定したいなら Intrada Amino Acid
を使うべきです。
一方、最初からカテコールアミンだけを対象にし、高速・高感度で測定したいなら Scherzo SS-C18 が最適なカラムです。
両者とも逆相では保持できないカテコールアミンを確実に保持し、LC-MSで安定して測定できるよう設計されている点が大きな特長です。
インタクト(IMTAKT)のHPLCカラムラインアップ
インタクトのHPLCカラムは以下のような種類と分離モードがあります。HPLCカラムの選択にご活用ください。
逆相モード(アルキル系固定相)
Cadenza CD-C18:異性体など逆相精密分離に
Cadenza CL-C18:シラノール量制御型ODS
Cadenza CX-C18:塩基性化合物をギ酸酸性移動相で
Cadenza CW-C18:1000Daよりも大きな分子に
Unison UK-C18:水~有機溶媒まで高い汎用性ODS
Unison UK-C8:高極性から低極性まで汎用性の高い逆相分離
Unison UK-C1:疎水性の高い鎖状分子に威力
Dacapo DX-C18:アルカリ移動相で分析するときに有効
Intrada WP-RP:C4ワイドポアカラムよりもタンパク質が溶出しやすい
Presto FF-C18:世界でオンリーワンのノンポーラスODS
逆相モード(フェニル系固定相)
Unison UK-Phenyl:錯体や構造異性体に
Nardis
ND-RX:両イオン交換によるPhenyl固定相の分離改善に
Nardis
NF-PFP/Biphenyl:PFPとBiphenylのハイブリッド固定相
逆相モード + イオン交換モード
Scherzo SS-C18, SM-C18,
SW-C18:殆どのイオン性物質に対応 Nardis
ND-RX:両イオン交換によるPhenyl固定相の分離改善に
順相モード +
イオン交換モード Unison UK-Silica:酸性移動相による順相分離に
Unison UK-Amino:糖類など汎用的な順相分離に
Nardis ND-NX:両イオン交換を使った順相分離に
逆相モード(血清直接注入、高分子タンパク質排除 界面活性剤保持)
Cadenza HS-C18:mAbの安定化剤分析に大好評
アミノ酸LC-MS分析専用カラム
Intrada Amino Acid:世界中に普及しつつある非誘導体化アミノ酸LC-MS分析法
有機酸LC-MS分析専用カラム
Intrada Organic Acid:シリカ系では初めての非誘導体化有機酸LC-MS分析法
高分子 SEC-MS
Intrada SEC:シリカ系で揮発性溶離液によるSEC-MS対応
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