imtakt インタクト

YAZAWA HPLC COLUMN SCHOOL

ENGLISH

HPLCカラムの保管方法


一般的なシリカ系HPLCカラムは基材シリカがアルカリで加水分解しやすいことから、アルカリ移動相によるカラム保管は推奨されません。
反対に、弱酸性以下ではシリカは安定ですから、シリカ系カラムの長期保管には弱酸性条件が好適と考えられます。

カラム保管方法はカラムの種類や分析条件などで異なります。保管のための溶媒置換はそれほど長時間を必要とせず、概ね10分ほど通液すれば良いと思われます。

1. ODSなどのシリカ系逆相カラム
Cadenza CD-C18, CL-C18, CX-C18, CW-C18, HS-C18
Unison UK-C18, UK-C8, UK-C1, UK-Phenyl
Presto FF-C18, Dacapo DX-C18

カラムを頻繁に使う場合には、アセトニトリル / 水 溶媒による置換後にカラム保管することが一般的です。しかしこの溶媒はpH調整がされていないため、カラム保管が数週間以上場合シリカ基材が加水分解を受けてカラム劣化につながることが懸念されることから、弱酸性の封入溶媒が推奨されます。
インタクトの一般的な逆相カラムはカラム保存安定性の理由から、出荷時に以下の移動相溶媒で封入されています。

アセトニトリル / 水 / 酢酸 = 60 / 40 / 0.1

微量な酢酸を添加することでカラム内のpHを下げ、保存安定性を高める目的があります。
このように、分析後のカラム保管は上記移動相のような有機溶媒を含む酸性移動相が推奨されます。
だたし強い酸性(TFA, ギ酸など)で封入すると酸加水分解による固定相リガンドの脱離が懸念されます。この点酢酸は弱酸のためシリカカラムの保管には最適です。


2. シリカカラム
Unison UK-Silica

シリカ充てん剤は中性以上のpHと水に弱いので、以下のような高有機溶媒濃度と弱酸性による封入保管が推奨されます。

アセトニトリル / 水 / 酢酸 = 90 / 10 / 0.1

シリカ固定相の洗浄も兼ねるなら以下のような極性溶媒が考えられます。

アセトニトリル / 水 / 酢酸 = 20 / 80 / 0.1


3. アミノカラム
Unison UK-Amino

インタクトのアミノカラムは水系移動相にも耐久性能があります。
アミノ固定相の洗浄には揮発性塩類(たとえば100mM 酢酸アンモニウム)が好適です。

[Unison UK-Aminoカラムの洗浄]

この洗浄後のカラム保管には以下の封入溶媒が推奨されます。100mM 酢酸アンモニウム系移動相からは直接置換できます。

アセトニトリル / 水 = 90 / 10


4. ミックスモード(マルチモード)カラム
Scherzo SS-C18, SM-C18, SW-C18, Nardis ND-NX, ND-RX
インタクトのマルチモードカラムにはイオン交換リガンドが導入されていますから,カラム洗浄時には揮発性塩類(たとえば100mM 酢酸アンモニウム)が推奨されます。

[Scherzo C18カラムの洗浄]

洗浄後のカラム保管には以下の封入溶媒が推奨されます。100mM 酢酸アンモニウム系移動相からは直接置換できます。

アセトニトリル / 水 / 酢酸 = 60 / 40 / 0.1


5. サイズ排除(SEC)カラム
Intrada SEC

インタクトのSECカラム Intrada SEC は,水系だけでなく非水系SECにも対応しています。
水系の場合は以下の封入溶媒が推奨されます。

アセトニトリル / 水 / 酢酸 = 50 / 50 / 0.1

非水系の場合は以下の封入溶媒が推奨されます。

メタノール


6. 洗浄溶媒のまま保管する
洗浄溶媒がカラムに対して加水分解などの化学変化を起こしにくい安定なものであるなら、洗浄後そのまま密栓して保管することも一法です。
保管溶媒に置換する手間を省くことができるため,運用コストを削減できる可能性があります。


7. 移動相のまま保管する
組成の異なる洗浄・保管溶媒でカラムを頻繁に置換することは、カラム充てん状態を変化させやすく、かえってカラム寿命を低下させる恐れがあります。
毎日同じ移動相系で分析していてカラム洗浄を必要としない場合には、移動相のまま保管することが運用コスト上有利です。
また組成の違う溶媒によるカラム洗浄の結果次回の分析移動相平衡化に長時間を要することがあります。溶媒コストや固定費の増大が懸念される場合には敢えてカラム洗浄しないで移動相のまま翌日まで保管することも選択肢のひとつとなります。


8. 補足
HPLCカラムはメーカー出荷時が最高の状態です。購入後未使用であっても長期保存中に劣化したり、初期移動相による平衡化や、分析移動相や洗浄・保管溶媒の通液でもカラム劣化の方向に向かいます。カラム性能を分析時に最大に発揮するために、洗浄・保管溶媒の取り扱いには留意が必要です。
またHPLCカラムは内部が乾燥すると致命的な損傷を受けます。いずれの保管方法でもカラム両端の密栓をしっかりと締めてカラム内部が乾燥しないようにする必要があります。


XD08 / 矢澤  到 [YAZAWA Itaru, hplc@imtakt.com]

| ホーム | 製品情報 | ニュース | サポート | その他 |