カラムのコラム (Columns for Columns)

 

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会社ロゴマークの設計

2021-05-12

 

前稿では 「インタクト(Imtakt)」 社名の由来について記述しました。
会社運営するためにはロゴマークも必要ですから,社名設定と同時期にロゴマークの設計もおこないました。

自ら立ち上げたHPLCカラム事業ですから,ロゴマークも外部デザイナーに頼らずに自分で設計したいと思いました。 パートナー(則内)らにもアイデアをもらいつつ,1週間で設計したのが以下のロゴマークです。



国際舞台で活躍できる Made in Japan,しかも「ものづくり」伝統の奥深い京都の会社のひとつでありたい,という思いから以下のコンセプトを設定しました。

1) 「インタクト」という精密分析の印象が与えられること
2) 世界的に通用するデザインであること
3) 音楽に関係があること (社名由来)
4) 「京都」の要素を盛り込むこと

総合的に考えたとき,まず浮かんだのが打楽器の「トライアングル」でした。 私が大学生時代にプロのオーケストラに「トラ(エキストラ)」で参加し,ロシア管弦楽の名曲「コーカサスの風景(イッポリトフ=イワーノフ)」を緊張しながら演奏したトライアングルです。最終曲「酋長の行列」は,ティンパニや大太鼓,小太鼓,タンバリン,そしてトライアングルの正確なリズムの上に朗々としたメロディが流れる美しい緩やかな行進曲です。控えめなトライアングルが一定のリズムを刻む,演奏していてとても気持ちの良い楽曲です。

話が逸れましたが,トライアングルをベースにロゴデザインを考えているうちに,もっと「正確なリズムを表現する」ものとして,「メトロノーム」の存在に気付きました。
メトロノームは一定のテンポ情報を目や耳に伝えるもので,楽器のレッスンには不可欠な道具です。古典的なメトロノームは,三角形の筐体に重りの付いた振り子が左右に往復運動をする形をとっています。
メトロノームの三角形筐体と振り子,トライアングルの三角形とそのスティック,という共通性から「三角形」と「棒」というイメージが出来上がりました。「棒」は「Imtakt」の「I」の表現として使えるとも考えました。

メトロノームもトライアングルも世界に通用するイメージなので,設計コンセプトのうち 1)-3) はクリアしましたが,4) の京都らしさが残っています。
ロゴデザインのスケッチを繰り返すうちに「京都」の発想が出てきました。ロゴ色は「京紫(古代紫)」にしようと。「京紫」は赤紫色で,「江戸紫」は青紫色です。後世に残すために印刷用のCMYKの各値も設定しました (ただしディスプレイRGB調整のため,ブラウザ上では若干明度を上げています)。
さらに京紫色の試作ロゴから新しい光景が見えてきました。「平安京」です。
平安京が千年以上続いた理由のひとつは「地形」にあります。平安京の構造は,随・唐時代の「長安」をモデルにした約5km四方の四角形で,しかも北山・東山・西山という自然の要塞に囲まれた地の利が加わっています。この平安京の四角形と山の三角形をロゴに取り入れることで「京都」の意味がより強くなると考えました。
千年の都・京都にはもうひとつ重要な要素として,「水」があります。都に大勢の人が住み続けるには水は不可欠ですが,平安京には当時から東の加茂川や西の桂川などが流れており,そこに堀川や天神川などの「堀」を南北に何本も通して,大きな街の中にたくさんの水路を確保していました。ちなみに京都の川が基本的に北から南へ流れている理由は,北側三方の山が作り出した「扇状地」の地形のためで,澄んだ豊富な地下水が「京都伏見の名酒」を生みだしています。
「京都」をロゴに盛り込むとすれば,平安京の「四角」,三方の山の「三角」,河川をイメージする「棒」ということで,これですべての設計コンセプトが満たされました。

精緻な製品を目指すため,正方形と正三角形の組みあわせにすることとし,そして最終的に出来上がったのが上述のようなロゴデザインです。
会社の VI (Visual Identity) としての公式説明は,以下のページで記述しております。

インタクト社の概要

余談ではありますが,ロゴマークを「正方形」に決定したとき,この形が将来コンピュータ上で何か役に立つことがあるかもしれない,と当時予感しました。その予感は,最近始まったブラウザの "favicon.ico" (ファビコン) 仕様(正方形)として的中しました。

会社の名前やロゴマークを自分の手で生み出せたことは,創業者のひとりとしてのプライドとともに大きな幸せとして感謝しています。

(矢澤  到, YAZAWA Itaru)