カラムのコラム (Columns for Columns)

 

15
シリカと畳の関係 -- 多孔性について --

2002/04/18

 
クロマト材料としてのシリカ基材には,シリカ粒子にナノメートル単位の穴(細孔)のある「多孔性シリカ」と,細孔のない「非多孔性シリカ」があります。これらの表面積は100倍以上違いますから,どちらのシリカを使うかによって,カラムとしての保持挙動はまったく異なります。
現在の一般的な逆相カラムには多孔性シリカが用いられています。この「多孔性」という性質は,ODS固定相を特徴づけるポイントのひとつでもあります。細孔の大きさや分布などが,充てん剤の良し悪しや分離に影響しているからです。

シリカの多孔性が応用されているものに,実験室におけるデシケーター用のシリカゲルがあります。薬品の防湿が目的で,直径数mmのシリカ粒子が使われています。使いはじめは青色をしていて,吸湿とともに淡赤色に変化しますが,加熱乾燥してやれば元の青色に復活します。このシリカ粒子は多孔性であり,細孔内に乾燥マーカーとしての塩化コバルトがしみこんでいます。
同じようなシリカの機能としてもっと身近な例は,食品の乾燥剤に使われるシリカゲルです。食品が湿気を帯びないように,水分を吸着するための多孔性シリカ粒子が用いられています。
これらのデシケーターや食品乾燥剤のシリカゲルは,クロマト用のシリカと構造的には同じですが,純度や構造の精密さには雲泥の差があります。

シリカ以外にも多孔質材料は身近なところにたくさん存在します。
脱臭剤として使われる活性炭。建築材料の煉瓦やブロック。食器洗いやファンデーションに使うスポンジ。水滴を通さない通気性のスキーウェア。そしてコーヒーフィルター。最近では歯磨きにも多孔性の研磨剤が使われているようです。
これらの材料にあいている「穴」はそれなりの意味を持っています。たとえば「軽い」,「やわらかい」,「においや水などの物質を捕捉する」,「物質の透過を制御する」,「保温や断熱性」という特性です。

そして畳。交互に積み重ねた稲わらと,スポンジ状断面のイグサを合わせた日本独特の住宅素材です。通気性と断熱性を備えた細かな穴があいていますから,畳も一種の多孔性製品と見ることができます。
畳の効果には通気性や断熱性だけでなく,二酸化窒素ガスを吸着する作用があるそうですが,物質の吸着性という意味ではクロマト材料のシリカと共通しています。
畳もクロマト用シリカも,どちらも穴があいていることで,より多くの物質を捕捉したり透過させることができます。

「多孔質」は多くの用途をもった便利な性質です。
ナノスケールの「穴」の性格をいかに把握するか。クロマト材料を扱う者にとって,「穴」すなわち「多孔性 」の理解が,カラム性能を極める上でとても重要な作業です。
今日もシリカの穴の中をのぞき込んでいます。