カラムのコラム (Columns for Columns)

 

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HPLCは何の略?

2000/06/24

 

HPLCという略称。

当然のように「高速液体クロマトグラフィー」という日本語が適用されています。略して「高速液クロ」とか単に「液クロ」とか,便利に使っています。言葉の 由来が「High Performance Liquid Chromatography」 であることはいうまでもありません。

しかし,どうして「Performance」という英語が「高速」になっているのでしょうか?
「Performance」は普通に訳せば「性能」ですよね。 だから本来の和訳では「高性能液体クロマトグラフィー」になるはずです。ちょっと変ですね。

1970年前後に,HPLCが日本に入ってきた頃,実はいろいろな言葉が飛び交っていました。

もともとLC(Liquid Chromatography)というのがあり,ある日新しい送液ポンプが登場したのです。高圧送液ポンプです。
送液ポンプの重要な性能に,耐圧性があります。現在でもダイアフラムポンプのような薬液送液ポンプは,耐圧性がせいぜい数MPaしかありません。LC分離には不向きです。LC高性能化のためには,充てん剤の粒子径を小さくすることが重要ですが,粒子が小さくなるとカラム圧が高くなりますから,高圧で安定した送液系が必要となり,そしてHPLCの登場となったわけです。数時間から一晩かかったクロマトグラフィが数十分でできるようになったのは,この高圧送液ポンプの登場のおかげです。
当時は高圧で流せるシステムがなかったので,この技術は革新的なものだったようです。そこで名付けられたのが「High Pressure Liquid Chromatography」 。略してHPLC。和訳は「高圧液体クロマトグラフィー」。
さらに高圧で流すことにより高速に分離できるようになったので,「High Speed Liquid Chromatography」ともいわれました。略してHSLC。和訳は「高速液体クロマトグラフィー」。
さあ困った!どちらを使ったらよいのでしょう。
1970年代は,両者入り乱れて使用されていました。これでは不便です。

後年もう一つの言葉が生まれました。どちらにせよ「高性能」になったのだから,「High Performance Liquid Chromatography」の方がよいではないか。略してHPLC。和訳は「高性能液体クロマトグラフィー」。
そして 歴史的に用語の統一がなされ,現在の, High Performance Liquid Chromatography, HPLCが一般的になりました。
したがって「HPLC」は,「Performance」でも「Pressure」でもあるのです。

しかし日本における和訳は現在でも「高速・・」のままです。
これは 想像ですが,直訳の「高性能・・」というよりも,「高速」の方が分離速度を直感できるため,「High Speed ・・」の和訳のままで一般化されたのではないかと思います。

本格的なHPLCが登場して30年が経ちました。HPLCという何気ない言葉の裏には,多くの研究者や技術者のLCの高性能化に対する努力と歴史があります。先達の成果に感謝しながら,我々は次のHPLC技術を拓いてゆかなければならないと考えます。

(矢澤  到)